師匠が出演された舞踊会を観てまいりました。
うちの先生は踊りももちろん最高だけど、セリフが本当にお上手なんだよなあ。
私としてはこれが建て替え前の国立劇場見納めになりそうです。
なお、マイファースト国立劇場は大学1年の時の歌舞伎鑑賞教室。
同級生が「中高の同級生が主役で出るから」と誘ってくれたのですが、その日に限って大寝坊した私ときたら、開演後に座席に駆け込むやら、ラフな格好で楽屋訪問してしまうやらで、苦い思い出となっております…。
トップに載せた写真のレストランには今回初めて入りました。その名も「十八番」。
そこはかとなく谷口吉郎テイスト?
日本舞踊の会ってすごく長いんですよ。20分以上かかる演目もざらだし、大道具(背景&セット)を変えるから待ち時間も長いし…
慣れない頃は貧乏性に前述のトラウマも加わって最初から最後までお行儀よく観てしまっていましたが、見たい演目の前後だけ見て帰る人や、演目をいくつか飛ばして休憩する人が多いようです。
私も今回は途中でランチタイムとおやつタイムをとらせてもらいました。
確かに全部しっかり見たら相当おなかいっぱいで頭ヘロヘロ、現実のお腹はペコペコで、そのあたりの感覚は美術館の企画展とそっくり。
ロビーの売店が充実していてレストランまであるのはそういうことだったんですね。
売店も伝統芸能関係のものだけ置いているわけではなくて、和小物のセレクトショップ的な感覚でした。もっと早く見てればよかった!ビーズで縫いつぶしたバッグとか、カボチャやナスの天ぷらを模した陶器の箸置きセット(ちょっと欲しい)とか、面白いものがいろいろありました。
で、以下、抜粋で感想覚え書きです。
(自分の師匠については下手にいろいろ書くのも失礼な気がして割愛!)
供奴(ともやっこ)
「うちの旦那ってすげーかっこいいんだぜ!」と主人の自慢話をする、お供の奴さんです。流派のお家元の若様(尾上左近さん)が踊られました。
この演目は、ともすると「かっこいい旦那に仕える俺かっこいいだろドヤ」みたいな外連味が出そうだなと思ってるんですが、左近さんの供奴はあくまで品の良さがあって、でも奴さんらしく力強く豪快で、すごーく良かったです。まっすぐに主を慕う若者という感じでした。
歌舞伎俳優さんなこともあってか結構顔の表情をつけて踊られていて、それがまた生き生きと良い顔で。もともと目が利くお顔立ちなんだと思いますが、奇抜な衣装やお化粧に埋もれないどころか、むしろ美少年要素が引き立っていました。
真顔で花道を走って登場し、七三でしばらく踊るうちにほんのり口角が上がってくる…っていうのは、元からそういうものだったのかわからないけど、私には舞台に立った高揚感の表れみたいに見えました。本当にいいお顔だった…!
傀儡師(かいらいし)
長唄と常磐津と清元、やっと区別がつくようになった程度の私ですが、直感で衣装や雰囲気が好きだと感じる演目はなぜか清元の曲なことが多いです。
去年の発表会で踊った「申酉(さるとり)」もそうだし、いつか踊りたい「保名(やすな)」も清元。
この「傀儡師」もやっぱりという感じで、この日見た中で一番好きな演目だったかもしれません。渋いかな…。
女性が踊る場合は素踊りのことが多い印象ですが、今回の方は本衣装で、頭巾を取った時の色男ぶりにうっとりしました。月代ってセクシーですよね?
実は、自分の発表会が終わってからしばらく経ってみて「申酉、せっかく衣装があんなにかっこいいんだからもっと男らしく踊れるようになってからやればよかったかな…いつかリベンジしようにも神田祭とかじゃあまりに似すぎてて、ただでさえ始めたのが遅い私が似たような演目で舞台に立つ機会を消費するのもな…」と思ったりしてたのですが、傀儡師も頭巾取って肌脱ぎしたら申酉くらいかっこいいと分かって元気が出ました。本衣装の傀儡師、かっこいい男リベンジの目標にします。
…と、幕の後、並んで座ってた姉弟子たちに話そうとしたら食い気味に「そんなことないわよ良く似合ってたわよ」「私お世辞言わないって言ってるでしょ本当に上手だったわよ」「だいたい何歳でやったってもっとうまくなってから踊ればよかったって思うものよ」「それより次の発表会頑張りなさい楽しみにしてるからね」と全力で励まされてしまい、とうとう「傀儡師いいなあ」まで喋れず休憩時間が終了しました。ありがとうございます。
京鹿子娘道成寺
藤間蘭翔さんという今を時めく若手舞踊家の方が踊られるとあって、楽しみにしていた演目です。
幕が開いた瞬間からお人形のような美しさでしたが、期待以上に圧倒されました。
自分が巳年なので道成寺物には昔から思い入れがありつつ、これは日本舞踊よりお能の方が好きだと今まで思っていたんです。
だって娘道成寺、せっかく(せっかく?)蛇になったのに一瞬で終わっちゃうじゃないですか。
さっきまで美女(門番のお坊さんがうっかり言いつけ破って境内に入れてあげちゃうほどの!)だった蛇(清姫の霊)が正体を現して、坊主たちと妖術で戦って乱れ狂って、柱にもたれかかってぶるぶる震えたりするのがいいんじゃないですか…
…なんて思っていたんですが、いやいや、そっか、日本舞踊の方はこの美女が美女のまま踊るシーンを伸ばせるだけ伸ばしてメインで楽しめるようにしたんだな!と今回拝見して理解しました。
お能だと、白拍子に化けた清姫の霊が奉納舞を披露する場面はいわゆる「乱拍子」の濃密な緊張感だけで表現されるので、そしてそれこそがお能の美学の極みみたいな部分だったりもするんですが、江戸の庶民的には「もっと具体的に踊ってるとこ見たい…!」ってなったんでしょうね。知らんけども多分絶対そう。
てかバトルシーンはお能で観ればいいのよ。
※舞踊にも「紀州道成寺」という、お能に近い筋書きの演目もあるようです
烏帽子姿で格調高く→赤い振袖で妖艶に→引き抜いて白い着物にチェンジ→引っ込んでピンクに着替えて花笠→(所化たちの花笠踊り)→(お色直しの間は三味線の超絶技巧をお楽しみください)→藤色に着替えて手ぬぐいのクドキ→引き抜いて黄色い着物で鞨鼓を叩く狐さん→(再び三味線をお楽しみください、アンコールに応えて長めでお送りします)→紫鹿の子の衣装で再登場→引き抜いて振り鼓、だんだん人外感が…→肌脱ぎして蛇になり、鐘に上って幕
と、おそらくフルバージョンで踊っていらっしゃいましたが、衣装が変わるたびに踊りの雰囲気もがらっと変わり、それでいて癖がなくきれいに踊られるので全然見飽きませんでした。さすがに見る側も多少の気合は必要でしたけどね。
振袖の衣装って、見ているとプロの踊りでも結構「お袖が重くて大変そうだな…」と感じることが多いんですが、この方は引き抜きして初めて「今までそんな着込んでたの!?」と驚かされるくらい、身体が良く動いてました。
鐘に上がって見得を切る最後の場面まで全然バテてる感じがないどころか、何なら全然これから妖術バトルしそうだったのもすごい。
DVD売ってほしい…ボックスで買います。
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